上毛新聞オピニオン6回目

恒例になっている上毛新聞オピニオン。9月29日に6回目が掲載されました。

今回のテーマは「本質を捉えること、感じること」です。

今年は自分に取って色々と考える年になっています。これまでやってきたことと、これから進んでいく方向。漠然とやっているとモチベーションも高まりません。

それで以前もちょっと触れましたが、ピアノを勉強することでどんな能力が身につくのかという方向を考えています。今回の記事では「本質を学ぶ」ことを取り上げました。

本質に対するものとしては枝葉。

枝葉は受験テクニックのようなもので、これが正解!というものがあってそこに最短で到達するにはどうしたら良いかということ、本質は表面的なものではなく、替えの効かないもの、ベースとなるもの、考えのよすがとなるものです。

音楽の場合はどこを大きくとか小さくとか、指の形とかそういうものではなく、音楽を感じる、歌う、表現する気持ちが本質です。

そんなことを書きました。

以下がおおよその文章です。

「本質感じる体験、大切に」

「飛んでいきそうな軽い羽みたいに。でもパタパタではなくてヒラヒラな感じ。」「柔らかい光で黄色、いや少しオレンジ色かな。」

ピアノのレッスンや、アンサンブルの合わせのとき、イメージを伝えるためにこんなことを言っています。もちろん実際に羽や光の話ではなく、音の表現のことです。

音楽は言葉で表すのが難しいことも多く抽象的です。だからこそ沢山の可能性を持っていて面白いのですが、感覚的なものなので「?」ともなりがちです。

レッスンでも大切にしているのは、相手が幼児や小学生だとしても「なぜ?」と問いかけて自分自身で考えるようにすること。音楽は自分の持っているイメージを表現して、音で創造することです。

もし、指の使い方、音の細かな大きさ、左右のバランスまで全部教えて、ひたすら繰り返し練習すれば、出来るようにはなりますが、そこには「なぜそうにやっているか」や「自分の音楽」がありません。つまり大人が音楽をした結果として出てきた表現を表面的に教えても、子供はそれをまねするだけで本来の本質的なところから遠ざかってしまっています。

ところが小さなうちは、そんな風に弾き方をすべて教えてしまう方がその時としては結果的に上手に聞こえます。「小さいのに大人みたいですごい!」と。でも考えてみてください。子供が自分からそこには到達するのは無理です。子供の持っている音楽はもっと子供らしくかわいらしいもののはずです。

では自分の音楽を持つようになるにはどうしたらよいでしょうか。子供の持っている音楽は大人と必ず違います。話し方からも分かるように、リズムが曖昧だったり、歌いかたも違います。それでもその時期に自分の音楽を思い切り表現することを経験することで、その感覚は自然と身に付き、自身が成長し、精神的にも成熟したときに大人にも通用する音楽の表現が出来るようになります。

そうでなければ大きくなったときに、いちいちすべて教えてもらわなくては何も演奏出来なくなってしまいます。一生ずっと指導者がいるわけではありませんし、それは健全ではありません。

伸び伸びと自分を表現すること。それこそが音楽の持っている一番の本質で、演奏していても一番気持ち良いと感じることです。それを表現する技術が大切なのはもちろんなのですが、道具の様なもので音楽の本質は表現する気持ちそれ自体です。

本質を捉える感性、想像力、表現力、そしてこのコラムで初めからのテーマの「調和」。音楽からは自分自身も多くのことを教えてもらっています。そしてそれを様々な形で伝えて行くことが私の役割かなと感じるようになってきました。

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